量子シミュレーション
机の上で量子をまねて、できることの境目を見る。
GPUで量子回路をシミュレーションした記録。検索の仕組み、メモリと学習の壁、動きを圧縮した試験の結果を、会場のQ&Aと一緒に読みます。
要点をスライドで見る
量子コンピュータを使った実験ではない。
DGX SparkのGPUで量子回路の状態と変化を計算し、どの規模まで動き、どこからメモリや時間が足りなくなるかを調べた展示です。本物の量子コンピュータは使っていません。
ここに残すのは2026年8月の計画・検証をもとに、9月23日の会場で説明した内容です。実測と計算上の見積り、未実施の実験を分けて読むための記録です。
「これ量子コンピュータ?」
使っているのは普通の計算機上のシミュレータです。状態ベクトルという方式では、0や1の組み合わせごとの振幅を記憶して、回路による変化を計算します。測定結果の出やすさは振幅から求めます。
理想的な回路のシミュレーションと、ノイズのある実機で同じ結果が出るかは別の確認です。展示した実験は実機の性能を測ったものではありません。
「なんで33なの?」:回路を1回動かすことと学習の違い
当時の計画は、単精度で状態ベクトルを保持する方式と、この計算機のメモリを前提に33量子ビットを上限の目安にしました。33で64GiBという数字は状態ベクトル1個だけの概算で、回路を実行・学習する全メモリや実測時間ではありません。
同じ精度・方式なら、量子ビットが一つ増えるごとに表の大きさは2倍になります。学習では更新や繰り返し計算も必要なため、当時の資料では学習側は30を上限とし、小さい回路での学習と大きい回路での生成・検証を分ける計画でした。これはその方式・機材・当時の条件での記録です。
| 量子ビット数 | 状態ベクトル1個の概算 |
|---|---|
| 32 | 32GiB |
| 33 | 64GiB |
| 34 | 128GiB |
検索の例で、ゲートと答え合わせを見る。
会場ではGrover探索を例に、候補を重ね合わせ、条件に合う候補へ印を付け、その候補が測定で出る確率を高める回路を説明しました。答えを探す手順と、正しいかを判定する条件を分けて考える入口です。
「ゲートを重ねると何ができるの?」
ゲートは量子状態を変える操作です。この検索の例では、候補の重ね合わせ→条件に合う候補への印付け→その候補の振幅を増やす操作→測定、という流れに組みます。結果は確率で出るため、1回の測定で必ず正解を返す説明にはしません。
「誰が答えを知っているの?」
必要なのは、候補が条件に合うかを判定する回路です。これをオラクルと呼びます。答えを直接埋め込む小さな見本も作れますが、未知の答えを探す問題では、答えそのものを知らずに判定条件を回路へ書ける必要があります。
判定の回路を作る費用や、入力を用意する手間までなくなるわけではありません。回数の理論上の利点と、仕事全体で速いことは分けて見ます。
「パスワードを破れるの?」
この展示はパスワード解読の実証ではありません。現物のテンキーを量子の重ね合わせで押すこともできません。Grover探索の理論は、候補を回路の中で検査できる条件についての話で、現実の認証システムをそのまま高速化する話ではありません。
「量子って速いんでしょ?」
Grover探索の理論上の利点は、条件を調べる回数が候補数Nに対しておおむねN回から√N回へ変わる点です。シミュレータの実行時間や、どの問題でも高速になるという保証ではありません。
この展示の規模なら普通の計算機で十分、というのが当時の記録の結論です。GPUで量子の中身を再現する負担も含め、シミュレーションの速度を実機の速度へ置き換えて説明しません。
1回動く回路でも、学習は重くなる。
会場の資料では、回路の出力分布を見本に近づけるため、ずれを測り、回転角を更新し、繰り返す実験を説明しました。回路を1回計算できることと、何度も更新して学習できることには別の壁がありました。
「学習って何をしているの?」
見本と回路の出方のずれを減らすよう、回路のパラメータを調整する試験です。当時の一条件では1ステップ96.6秒という記録があり、同じ時間を1,000回に掛けると約26.8時間になります。後者は単純な見積りで、1,000回の全実測や学習の成功を示す数値ではありません。
ここでは、特定の回路・方式・機材・条件の記録として残します。量子を使ったあらゆる学習がこの時間になるわけではありません。
動きの圧縮は、量子の手前でつまずいた。
3Dアニメの動きの一区間を、普通の機械学習で33ビットのコードへ圧縮し、復元する試験も行いました。33ビットのコードと33量子ビットは別物で、この圧縮試験には量子回路は登場していません。
練習と重なる時間帯の断片は復元できても、時間帯を分けた初見の動きは復元できませんでした。「見た断片を覚えた」可能性が問題になり、データ不足を疑ったものの原因は未実証です。
| 計画していた段階 | 展示時点の状態 |
|---|---|
| 普通の機械学習で動きを圧縮・復元 | 実施済み。テストの分け方で結果が割れた |
| コードの出方を、量子回路と古典モデルで比較 | 本比較は未実施。回路条件の事前調査まで |
| 新しく生成したコードから動きを復元 | 未実施 |
| 人間が条件を伏せた動きを見て判定 | 画面の準備中。判定は未完了 |
「精度はどのくらい?」
練習と重なる断片は、同じ採点方法でコマを半分〜4分の1へ減らした比較版と近い劣化の水準でした。初見の時間帯では復元できず、単一の「精度」で良い結果としてまとめられません。
数値での比較が、人間に自然な動きに見えることを保証するわけでもありません。人間向けの判定画面が分かりにくかった経験から、何を見て成功とするかを読める形にする必要が残りました。研究用の画面そのものは公開していません。
会場のポスターと、説明の続き。
2枚のポスターは、会場での説明を残す資料です。画像を拡大して読めます。このページの本文では、計算方式の前提と、実施済み・見積り・未実施を補って説明しています。
2026年9月23日の生成AIなんでも展示会 Vol.6の資料と、前後の制作記録をまとめています。制作や検証の時点は、各説明に記しています。
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